練習試合の成立プロセス=自助努力


 学生野球とは異なり、各メンバーが違う環境や組織に属し、さらには家庭の有無など生活様式、経済状況なども異なる中、1977年創設のランナウェイズ球団は、40年という長きにわたりクラブチームとしての活動を続けてきました。多くのチームが活動を休止したり、メンバーが空中分解してしまう中、チームが2017年に創立40周年を迎えられたのも、理由はたったひとつ、メンバーに自立と自律の精神があったからです。

 野球が好きなメンバーが9名以上揃えばチームは出来上がりますが、それだけでは長く存在することはできません。チーム運営に関する合理性や、平等性は言うまでもありませんが、それだけでも足りません。最も大切なことは、自立し自律したメンバーの意識の有り様。単に勝った負けたで一喜一憂するだけでなく、どうしたら一人の人間としてチームに貢献できるか、と考える姿勢こそが尊いのです。クラブチームですので、これを我がRBでは「ボランティア精神」と呼んでいます。

 ひとつ練習試合を行うにも、多くのハードルがあります。試合をするグランドは確保できているのか? 対戦相手は確実に来てくれるのか? 審判の手配は終わっているのか? 当日、メンバーは9名以上参加するのか? メンバーの中で事情により集合時間に遅れてくる者はいるのかどうか? と、さまざまな目配りと確認が必要になります。ここでは、クラブチームとしての目標を達成するため、我がRBが日々行っている自助努力の一部をご紹介します。


●事前準備/コーディネイト
 我がRBの当面の目標は、たったひとつ「世田谷区軟式野球連盟1部での優勝」です。そのためには、年間多くても10試合程度の連盟主催の大会=公式戦(日曜・祝日)を戦うだけではなく、毎週土曜日の試合前の練習と、練習試合が大事になってきます。決して強いとは言えないチームですので、経験こそ大事なのです。従ってその試合数は、多ければ年間60試合超。少なくても50試合程度は実施します。
 これだけの数の練習試合をセッティングするためには、 グランドを確保する、対戦相手を決める、審判を手配する、9名以上の参加メンバーを確定する、などなどが必要です。 特にグランドの確保、対戦相手の探索には時間を要します。そこで、我がRBでは月毎に練習試合のコーディネイト担当を班別に割り振り、予定している練習試合が確実に実施できるよう、数ヶ月前から準備に当たります。
 メンバー全体の底上げを図る意味でも試合数は大事ですし、出場機会を増やし経験を積むためにも試合数は多くなくてはなりません。そのうえで、強いチームの胸を借りて自分たちのレベルを知り、いろいろと勉強させてもらいたいとも思います。ということで、この事前準備(コーディネイト)は、正にチーム強化に直結するのです。そんな気持ちを抱きつつ、担当メンバーが手を抜かずに取り組んでいるのですから、これこそ「ボランティア精神」と呼ぶべきものなのです。



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河川敷…ここにランナウェイズ・スピリッツが宿る


●練習試合/ホームゲーム
 コーディネイト担当の役割は、練習試合をマッチメイクして終わりではありません。練習試合を行うにあたって我がRBが大切にしていること、そのひとつが「怪我をしないこと」です。 スポーツは怪我をして楽しいことなど何もありません。しかし試合当日、寒い日もあれば小雨が降る日もあります。スポーツに怪我は付きものと言われますが、クラブチームのメンバーはプロではありませんので、怪我をすれば仕事や家庭に影響を与えます。
 であれば、事前にできることをキチンとやることで、そのリスクを最大限に回避する。それが、とりわけクラブチームにとっては必要なことです。その一例が集合時間の設定。試合開始の少なくとも1時間半前(大会なら2時間前)には集合するのです。理由は、みっちりとアップと練習をする時間を確保するため。ご想像の通り、早朝の試合の場合は結構ツラいのですが、チームの誰かが憂鬱なリハビリ時間を過ごさないためにも必須のことなのです。
 ですから自分の怠慢で集合時間に遅刻をしてくるようなメンバーは、どんなに野球の能力に優れようとも先発出場はありません。仲間が一生懸命コーディネイトしてくれているという感謝も忘れ、遅れてくることで仲間を心配させ、当人もキチンとアップできなければ怪我のリスクが伴うからです。怪我はチームのリスクに他なりません。メンバーに怪我をされては、戦力ダウンは必至だからです。だからコーディネイト担当の役割は、チーム強化に繋がる、と言われるのです。
 試合当日は30分ほどの簡単なミーティングで、まず「試合の位置づけ」を監督から、メンバーからは意気込みや意見・提案などの発言があります。その後、主将・副将を中心としたアップ、及び練習が試合開始15分くらい前まで続きます。 野球のできるグランドは各地域に沢山ありますが、 この「ミッチリとアップ・練習できるグランド」は限られています。試合開始10分前にしかグランドに入れず、それまではキャッチボール・素振り禁止が 当然視されているからです。
 多くの方々が、さまざまな目的で集う公園は、グランド周辺といえどもキャッチボール・素振り、ましてやノックなどは危険を伴う行為です。万が一の事態を引き起こしては、楽しかるべき時間が台無しになりかねません。そこを理解できるなら、規則に従いアップや練習を諦めなければなりませんが、それではメンバーにとって不都合は言うまでもありません。そこで「ミッチリとアップできるグランド」の獲得が、コーディネイト担当(無論メンバー全員)の重要な役割になってくるのです。
 そしてもうひとつ重要な役割は「相手チームへのリスペクト」です。貴重な週末を我がRBとの練習試合に充ててくれるのですから、我がチームの強化を支えてくださる存在に他なりません。相手によっては、我がRBのホームゲームのグランドが初めてというチームも珍しくありません。誤解を生じないように何度もご案内を差し上げ、当日はアップの間も連絡を絶やさないため、担当は携帯を離しません。無事に試合を終え、感謝の言葉をいただくとき、コーディネイト担当は初めて心からほっとするのです。



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同じ目標に向かって続く練習、練習、練習…


●練習試合/アウェー
 グランドの獲得ができず、ホームゲームでの形態の練習試合を行うことが厳しい場合もあります。その場合は、メンバーのコネクションや、過去に対戦させていただいたことのある相手、さらにはネット上で対戦相手を募集しているチームに声をかけさせていただき、 練習試合を組むこともコーディネイト担当の役割です。結果、ホームゲームのマッチメイクに伴う作業に、もうひとつ「遠征」という要素が加わり、アウェーの練習試合を実施することになります。
 この場合、参加を申告しているメンバーをどのように集合させるかを決めるため、何よりも現場の把握が必要です。駐車場からグランドまで道具を運ぶルートと時間、アップの場所の有無、食事を摂る場所の探索やそこからの移動時間など。仮にダブルヘッターの場合、次の試合に間に合う時間設定やルートの調査も求められます。下手なツアコンより、細かい時間設計が求められるのですが、これも「怪我をしないこと」と「相手チームへのリスペクト」から発するものなのです。
 そして「相手チームへのリスペクト」上、よりアウェーで厳しく求められるのが、ユニフォームの着こなし。前週の汚れたままという選手はほとんどいないのですが、帽子を忘れた、アンダーソックスを忘れた、グラコンを忘れたという選手は、遅刻同様、先発出場はありません。キチンとユニフォームを揃えることは、「相手チームへのリスペクト」以外の何物でもないからです。新人でユニフォームが未着の者がいる場合、相手チームに無礼を詫びることも基本だと我がRBは考えています。

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野球が出来る環境に感謝!(脱帽→礼)


●スコア集計~分析
 各メンバーの成績は、練習試合や公式戦の結果を基に定期的に集計・分析を行い、年2回発表されますます。夏の創立記念日と、暮れの納会の席です。成績は個人のモチベーションになりますが、同時に出場機会の公平性にも繋がる、クラブチームの客観的な指標です。そのため我がRBは、監督を除く全メンバーがスコアをつけられることが常識との方針です。クリーンアップを打っているから、年齢が上だからといった"特典"は一切ありません。
 出場している試合中のスコアづけは、誰であれ煩雑な作業です。もちろん我がRBも女性スコアラーにスコアづけをお願いした時期がありました。しかし必ずしも全試合、来ていただけるわけではなく、集計に漏れが出ては、公平な記録とは言えなくなります。そこで自分のことは自分でとの方針から、シーズン開始前に「スコアブック講習会」を開き、全員に習得を義務づけています。さらにはこれを徹底するため、テストを敢行、3回落第という猛者もいたのです・・・。
 さて成績ですが、打率や出塁率も大事ですが、チームとして最も重要視されるのは出席率です。それは、より多くの練習試合を成立させるためには、一人でも多くのメンバーの出席が欠かせないからです。野球の試合は何があるか判りません。不測の事態が起きたとき、その時点で試合中止となってしまっては悲しいですし、相手チームにも失礼です。9名しか出場できなくても、アップや練習でスキルアップは可能ですし、仲間や相手を観察することも大切です。
 すなわち、出席すること自体が仲間への愛情であり「ボランティア精神」なのです。冒頭に述べたように、単に勝った負けたで一喜一憂するだけでなく、どうしたら一人の人間としてチームに貢献できるかと考えたとき、「出席」こそが尊いのです。当たり前のことのようですが、一人で野球は出来ません。多くのメンバーがグランドに参集することによって、自分も他のメンバーも野球が出来るのです。相手チームに対しても当然ですが、ランナウェイズのメンバーはチームメイトに対してもリスペクトする気持ちを忘れません。

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野球は、スコアをつけることで見えてくるものがあります