世田谷区軟式野球連盟 春季大会第二回戦
<2016年5月15日(日)>


春季大会二回戦は、奇しくも2週間ほど前に夏季大会初戦で敗れた相手との再戦。
同じ相手に2度負けることは許されないのと同時に、チームのテーマである"捲土重来"を期す絶好の機会です。
誰もが闘志を胸に、この機会を待ち望んでいました。

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▲プレーボール前のベンチ。相手チームの観察、素振り、スコアブックの準備。独特の緊張感に包まれます。

試合は、RBの先攻でプレーボール。
「初回が大事!」との掛け声はどこへやら…。
初回はおろか、3回まで1人のランナーも出すことができず、ですから先制の糸口すら掴めません。
相手の先発は、剛速球投手というわけではありませんでしたが、
テンポのいい投球間隔、打者の打ち気を外す間合い、緩急や変化球の混ぜ具合、
コーナーの出し入れなど、典型的な打てそうで打てない投手で、敵ながら天晴という投球でした。

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▲先頭打者のK選手。春季大会初戦では先頭打者の役割を果たしたものの、
二回戦では特に目立った活躍もなく、突破口を開けませんでした。

攻撃が空回りなら、守備はより堅実さが求められます。
守備が堅実なら、必ずチャンスが訪れるからです。
そこは昨年より数段、安定感を増したM投手も判っていて、決してスキを与えません。
M投手は一回戦同様にキチンとボールをコントロールし、初回、2回と相手につけ入るスキを与えませんでした。
好投手同士の投げ合いかと思われた3回裏、しかし、しかし思わぬところに破綻が待っていました。

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▲力投するM投手。この日も春季大会・第一回戦ほどではないにしろ、堅実に安定した投球を披露しました。


何と下位打線の8番打者に、やってはいけない四球を与え、勿体ない出塁を許してしまったのです。
角度のある重い速球に、微妙に動く変化球で、芯を喰った当たりを許してこなかっただけに、痛恨の四球とはこのことでした。
それでも後続を打ち取り、二死で迎えた打者の当たりは、バウンドの大きな緩い当たりで、何でもないショートゴロでした。
ショートが軽快にさばいてチェンジ、と誰もが思ったその瞬間、
ショートのK選手が一歩も前に出ずにボールを待っているではありませんか。
「マズイ!」とベンチの全員が思った通り、全力疾走の打者走者が目に入ったK選手は、
捕球したその体勢のまま慌ててファーストに送球したのです。
結果は、お約束の大暴投!
やらずもがなの先取点を相手に献上してしまいます。

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▲痛恨の先取点を奪われても、守備の要として仲間を引き締めるY選手。力投するM投手を、堅実にリードしました。


取られたら取り返せ、は野球のセオリーです。
直後の4回表、クリーンアップが意地を見せます。
私生活がゴタゴタ続きも、野球だけは頼れるY選手が、こちらも好投手から四球をゲットし、
すかさず盗塁で無死二塁のチャンスメイクをします。
相手投手は先取点をもらいましたが、わずか1点だったこともあり、守りの投球になったわけでもないでしょうが、
微妙にコントロールを崩したからかもしれません。
このチャンスに、期待に応えたのは四番で新婚のO選手でした。
見事なライト前タイムリーで、あっという間に同点としたのです。
ところが後が続きません。流れがRBに来たにもかかわらず、一気に襲い掛かるという迫力がないのです。
この同点止まりで逆転できないところにRBの未熟さがあり、これが後々に響くことになります。

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▲ライト前タイムリーの四番・O選手。お得意のサードゴロ、ではなく見事に四番の仕事を果たしました。


その後、試合は同点のまま進み、耐える時間が続きます。
再度、試合が動いたのは回も詰まった6回裏。
ここまで抑えてきた相手の先頭打者に、大きな三塁打を打たれ、無死三塁という厳しいピンチを迎えてしまいます。
引っ張り専門だったこの左打者は、3打席目は工夫し、高めの外のボールを狙い打ちし、
レフトの頭を大きく超える当たりを放ったのです。
同じ先頭打者でも、同じ凡打の繰り返しを続けたRBのK選手と違い、相手の先頭打者は狙い球を絞って打席に入ったのです。
それでもこのピンチは、次打者のサードゴロで本塁に突っ込んだ三塁ランナーの暴走に助けられ、
無失点のまま一死一塁と局面が変わります。

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▲厳しいピンチを救った三塁手O選手。どんなときも、普通のプレーができる心の強さがあります。
またチームの元気印で、大人しいメンバーに常に喝を入れます。


ただ、安心したのも束の間でした。
大三塁打がショックだったのか、打ってくれない味方に疲れてしまったのか、
急にまるで昨年のM投手を見ているかのような乱調になってしまい、連続四死球を与え、
瞬く間に今度は満塁の大ピンチを迎えてしまいます。
冷静さを失ったM投手とキャッチャーのY選手は、サイン交換のリズムが合わず、
投球モーションに入ったときに、Y選手が内野に指示を出しているのを見て、M投手は動きを止めます。
当然これはボークを取られ、そのショックからか、簡単に内野と外野の中間に上がったフライを打たれます。
これを不慣れな外野を守っていたT選手が捕れず、結果タイムリーとなって、
終盤のこの回、痛い、痛い2点を失ってしまうのです。

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▲好投するも味方の援護がなく、さらには足を引っ張られ、
ついにはキャッチャーとのリズムも合わずに敗戦投手となってしまったM投手。


後がない2点差の7回表、2点以上を取らなければ最終回になってしまいます。
この回は、先程、得点を記録しているY選手からで、守備ではキャッチャーとして精一杯の働きを見せ、
バッティングでは気迫と執念で仲間を鼓舞してきました。
チームは、その攻撃マインドに望みを託します。
そして期待通り、Y選手は意表をついたセーフティバントを試み、一塁へ鬼気迫るようなヘッドスライディングを敢行し出塁します。
一方、相手投手もキャッチャーを押しのけるような勢いでマウンドを駆け下り、
Y選手に勝るとも劣らない鬼気迫る形相で、転がる打球を掴みましたが、勢い余って尻餅をついてしまいます。
何が何でも先頭は出さない、屈辱的なセーフティバントなんかさせない、という意地とプライドがほとばしっていました。

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▲7回表、先頭で回ってきたY選手の打席。味方も驚くセーフティバントで、勝利の執念を見せます。


問題はここからでした。
Y選手の執念や気迫を目の当たりにし、集中力を嫌が応にも増したはずの4番、5番に打順が回りますから、
同点どころか逆転も可能との期待は、誰もが感じていました。
ところが、ところが……。
続く4番・O選手は、Y選手から勇気をもらうどころか、すっかり力みまくり、絶対的に必要な「冷静と情熱」を失くし、
ただのムチャ振りで、背信のサードフライという考え得る限り最悪の結果に終わります。
しかし驚くのは、この凡退だけではありませんでした。
敵も味方も、その場にいた総ての者が目を疑ったプレーが飛び出したからです。
何と一死一塁の場面で、5番・T選手はピッチャー前に送りバントをしたのです。
ベンチのS監督は、周囲に「俺は間違えてサインを出したか?」と聞くほどの驚きで、
RBのベンチは深い沈黙に包まれました。
後程、T選手がした釈明は「サード前にすれば確実にセーフになるから」でしたが、
2点差で送りバントはありえないとの疑問は解消されても、その判断には「?????」しか残りませんでした。
ただ、いずれにしても、あっという間に二死なのです。

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▲力感あふれるT選手の打席。この後、慣れない「謎の送りバント」を挙行し、みすみすアウトを献上……。


この「謎の送りバント」で、事実上、敗戦が確定いたしました。
続く6番は、大型扇風機と陰口をたたかれるN選手だったからです。
二死二塁という状況では、本塁打でようやく同点ですが、相手投手の質から言うなら、
扇風機は扇風機のままで終わる可能性が高いからです。
ところが、ところが……。
粘る、粘るで相手投手に食らいつき、とうとうレフト前へきれいな流し打ちで、Y選手を迎い入れ、
Y選手の執念と気迫に応えたのです。
しかし抵抗もここまでで、最後のバッターが打ち取られ、我らの春季大会は終戦を迎えてしまいました。

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▲右打ち徹底のT選手。チャンスに強いお手本のようなバッティングで、下位打線にあって大量得点のきっかけを作ります。

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▲捲土重来を果たせなかった最終スコアですが、この1点の差は、大きく広いと痛感させられる内容でした。

捲土重来を期した戦いは、残念ながら目的を果たせませんでした。
ヒットの数は両チームとも3本という結果ですが、相手チームは四死球1個、ノーエラーでありながら、
RBは四死球4個、得点につながるエラーが1個と、守備での質の差が勝敗を分けてしまいました。
もうひとつの課題は、先発メンバーと控えメンバーの力の差が歴然としていることで、
この試合は、控えメンバーが誰も出られませんでした。
控えメンバーの底上げ、先発メンバーと控えメンバーの差をなくすことこそ、
チームがたくましくなるために必須のことなのです。
この悔しさは秋季大会で晴らす他なく、そのための戦いはすでに始まっているのです。